「ジグマー・ポルケ展」@上野の森美術館

上野の森美術館というと、MoMA展とか馬鹿みたいに混んでいる展覧会の印象しか無いので、周囲の壁に大きな絵が幾つか掛けてある広間を、数人だけで占有している、ということに、まず感動。いや、美術館的には混んでいる方が良いんだろうけど。まぁ、金曜の夕方だし。


 でも、こういう、時間を掛けてじっくり向き合うことが要求されている(ような気がする)絵の場合、混んでいては、駄目のような。作者についての知識はほとんどないので、絵を見ただけの印象だけど、複合的な絵画だし。いや、ちょっと違うか。「複合」だと「複数のものが合わさって一つのものになること。」(大辞泉)だけど、あくまでも「複数のものが重なって一つのものにならない」という感じなので。


 1Fの作品の印象で、基本的に色彩の画家なのかと思っていたら、2Fの1室目が、数字の順番通りに線を引いた「魔法陣」のシリーズだったので、芸風?の幅の広さに驚く。最初見た時は、こういう作品は視線の動きをコントロールするという意味では有効だな、と妙な感心をしただけだったのだが、会場に置いてある図譜の解説を読むと、見る角度によって色が変わる背景について書いてあり、改めて眺めてみると、確かにそうだった。線を見ることに夢中になる一方、背景を見ることを無意識のうちに排除していたわけで、なるほど、一筋縄ではいかないアーティストらしい。図譜によると、かつてヴェネツィアビエンナーレに出展した時は、潮の満ち引き(湿度?)で色が変わる顔料を使用したとか、そんな話も。


 作品の中では、やはり「不思議の国のアリス」が格好良い。要素を一つ一つに分解してしまえば、それほど革新的な感じはしないのだけど、全体としてのイメージは今見ても新鮮。


上野の森美術館 / ジグマー・ポルケ展