「贋作・罪と罰」@シアターコクーン

 「赤鬼」のように可能な限り物を排した簡潔な舞台に、「走れメルス」 同様の贅沢な俳優陣を投入。前回までの試行錯誤が良い意味で、今回、統合されている、という印象。作品自体をストレートに伝える、という点でも、今回の演出は良かったと思う。あと、元の脚本も他の作品に劣らない出来と再認識。宝塚版が酷くつまらなかったのは演出のせい?


 主役・英の松たか子は置いといて(いや、悪くは無いですが)、段田安則古田新太、二人の存在感だけで、観に行った甲斐が有ったという気分。特に段田安則の都はまさにはまり役。一方、古田 新太の才谷は、まさに古田新太そのもので(^^;;、最初から最後まで、もの凄く面白かったんだけど、しかし、最後まで引っ掛かったのも実はそこで。


 (あの宝塚版のTV上映を除けば)、この作品は戯曲でしか知らなかったのだけど、才谷と英というのはある種の表裏というか、才谷も英のように迷いを持った若々しい青年、というイメージで読んでいた。しかし、古田新太の才谷だと、人物に対する「安心感」が強くて。とりあえず、絶対「負けないだろう」みたいな感じ?


 まぁ、再演ということを考えれば、古田「才谷」も有り、だとは思うけど。というか、今回の再演の最大の成果が、才谷に古田新太をキャスティングしたことだったのは、間違いない。しかし、初めてこの作品を舞台で観る者としては、う〜ん、どうなんだろう…


 今年は余り演劇に注力しなかったので、観た作品は「走れメルス」、「メディア」「コクーン歌舞伎・桜姫」、そして「贋作・罪と罰」位。って考えてみたら、私が今年観たお芝居って、みんなシアター・コクーン?(^^;; あ、新国立小劇場で「城」も観たか。


 ところで、年末の押し迫ったこの時期にわざわざチケットを取ったのは、この作品は年明けに観るより、年末の内に観るべき作品だと思ったから。 その点については、思った通りの綺麗な終わり方で、年内に観ることが出来て満足。